『臓腑病機の歴史』の附録・文献資料-⑤・・・明 |
文献資料《目次》
1 漢・六朝
『内経』『難経』『傷寒論』『金匱要略』『脉経』『中蔵経』
2 隋唐(618~907)
『諸病源候論』『千金要方』『千金翼方』『外台秘要方(『冊繁方』)』
3 北宋(960~1127)
『太平聖恵方』『小児薬証直訣』
4 南宋(1127~1279)
『普済本事方』『三因方』『済生方』『直指方』『管見良方大全』
5 金(1115~1234)・元(1277~1368)
『臓腑標本寒熱虚実用藥式』『素問玄機原病式』『儒門事親』『脾胃論』『丹渓心法』
6 明(1368-1644)
『玉機微義』『明医雑著』『医貫』『内科摘要』『保嬰撮要』『医学正伝』『医宗必読』『神農本草経疏』『医貫』『赤水玄珠』『景岳全書』『済陰綱目』
7 清(1644-1912)
葉天士(清)・魏之琇(清)・王旭高(清) ・唐宗海(清)・周学海(清)
参考《江戸時代・・・肝と鬱》
『臓腑病機の歴史』の附録・文献資料-⑤・・・明
『玉機微義』
『明医雑著』
『医貫』
『内科摘要』
『保嬰撮要』
『医学正伝』
『医宗必読』
『神農本草経疏』
『医貫』
『赤水玄珠』
『景岳全書』
『済陰綱目』
6 明
劉純
『玉機微義』1388
巻之一中風門・調血養血之剤
「天麻丸・治風因熱而生、熱勝則動、
宜以静勝其動、是養血也。」
王綸
『明医雑著』 (1502)
(1)脾陰虚、脾虚血燥、脾胃伏火
(2)火邪による生痰
(3)五臓倶有陰陽
巻之一・枳實丸論
「若人能食、好食、但食後反飽難化、此火旺脾陰虚、加白芍、人参、石膏、生甘草、黄連、香附子、木香。」
「若年高人、脾虚血燥、易飢易飽、大便燥難、用白芍藥、当帰、人參、升麻、山査、大麦芽、桃仁。」
巻六・附方・潤腸丸
「治脾胃伏火、大便秘渋・・・」
巻之一・化痰丸論
「若夫痰因火上、肺気不清、咳嗽時作、及老痰、鬱痰、結成粘塊、凝滞乃喉間、吐喀難出。
此等之痰、皆因火邪炎上、薫於上焦、肺気被鬱、故其津液之随気而升者、爲火薫蒸、凝濁結而生、歳月積久、根深蒂固、故名老名鬱。」
巻四・風症
「風病必血燥、風木生火、故血熱而燥。」
巻之五・急驚
「五臓倶有陰陽、如肝気為陽、為火、肝血為陰、為水。
肝気旺盛則肝之血衰矣、火妄動則水被煎沸不寧。」
虞摶
『医学正伝』(1515)
冒頭の医学或問以外は、病門ごとに論・脉法・方法・医案という順で書かれている。
巻之一・医学或問
「経曰陽中有陰、陰中有陽、正所謂独陽不正、独陰不長也。姑以治法兼証論之、曰気虚者、気中之陰虚也、治法用四君子湯以補気中之陰。
曰血虚者、血中之陰虚也、治法四物湯以補血中之陰。
曰陽虚者、心経之元陽虚也、・・・治法以補中益気湯加烏附等薬・・・。
曰陰虚者、腎経之真陰虚也、其病多壮熱、責其无水、治法以血薬中加知母、黄柏等薬、或大補陰丸、滋陰大補丸之類。」
巻之二・鬱証
論において五鬱と六鬱についての概説したあと、脉法で『診家枢要』を引用し手いる。
方法では丹渓の説として六鬱を紹介し用薬加減を説明し、方剤として越鞠丸、生韭飮、六鬱湯、升発二陳湯、升陽散火湯、火鬱湯の六つを挙げる。
最後に医案がひとつ載っている。
薛己
『保嬰撮要』(1555)
巻一肝臓
「肝経実熱而外生風」
巻一心臓
「心血虚而睡中驚悸」
巻一腎臓
「若因脾肺虚而不能生腎水者、用補中益気湯、六味丸地黄丸以滋化源。」
「前丸(地黄丸)治腎肝血虚、燥熱作渇、・・・
・・・或早近女色、精血虧耗、五臓斎損、或属腎肝諸症不足之病、宜用此以滋化源。」
趙献可
『医貫』1617
巻之一・陰陽論
「人之初生、純陽無陰、頼其母厥陰乳哺、而陰者始生。・・・
可見陽常有余、陰常不足、・・・故自幼至老、補陰之功一日不可缺。
此陰字指陰精而言、不是泛言陰血。
今之以四物湯補陰者誤也。」
巻之一・五行論
「水剋火者。後天有形之水火也。・・・水養火者、先天無形之水火也。」
巻之一・五行論
「以火言之、有陽火、有陰火、有水中之火、有土中之火、有金中之火、有木中之火。・・・・・・・・
以水言之、有陽水、有陰水、有火中之水、有土中之水、有金中之水、有木中之水。」
巻之二・主客辯疑・鬱病論
「内経五法之注(*)、乃出自張子和、非王啓玄旧文、故多誤。予既解釈其誤、又推広其義、以一法代五法。」
「一法治其木鬱、而諸鬱皆因而愈。
一法者何。逍遙散是也。」
(*)六元正紀大論第七十一における五鬱治法の注のこと
繆希雍
『神農本草経疏』1625『先醒斎医学広筆記』1613
『神農本草経疏』
巻一・論上盛下虚于腎水真陰不足
「豈不知摂養、縦嗜情欲、虧損真陰、陽無所附、因而発越上升、・・・・。
陽愈盛則陰愈虚、陰愈虚則五心煩熱、爲潮熱骨蒸・・・。
治之之要、当亟降気、当益陰精、気降則陽交陰也。
是火下降也。
精血生即腎陰復、是水上昇也。
坎離交、即是小周天・・・。」
巻一・論治痰飲薬宜分治
「由陰虚火炎、上迫乎肺、肺気熱則煎熬津液、凝結爲痰、是陰虚痰火。痰在乎肺而本乎腎、治宜降気清熱、益陰滋水。」
巻二・五藏六府虚実門
「癲癇・宜降、清熱、豁痰」
「胸肋痛・宜降気、養血、和肝」
「咳嗽吐血痰・宜降気清熱、潤肺生津液、涼血・・・」
「息奔・宜降気、清熱開痰、佐以散結」
「心実・即実火実熱・宜降火清熱」
「肝実・宜清熱降気」
「上消・宜降気、清熱、補肺、生津」
「口臭、数欲飲食・宜清熱降火」
巻二・五藏六府虚実門
「脾虚中満・属脾気虚兼脾陰虚。
昼劇夜静、属気虚。宜補気健脾、甘温、淡滲、佐以辛香。・・・略・・・。
夜劇昼静、属脾陰虚。宜補脾陰、兼制肝清熱、甘平、酸寒、淡滲。
酸棗仁、白芍、石斛、白偏豆、蓮肉、橘皮、山薬、蘇子、五味子、木瓜、桑白皮、車前子、茯苓」
巻一・論治血三法薬各不同
「血虚宜補之。虚則発熱、内熱。法宜甘寒、甘平、酸温、以益栄血。・・・
血熱宜清之、涼之。・・・法宜酸寒、苦寒、咸寒、辛涼、以除実熱。・・・
血瘀宜通之。瘀必発熱発黄、作痛作腫、及作結抉瘕積。
法宜辛温、辛熱、辛平、辛寒、甘温以入血通行、佐以咸寒、及可軟堅。」
巻一・論治吐血三要
「胃気傷則脾不能統血、血愈不能帰経」
巻一・論似中風与真中風治法迥別誤則殺人
「真陰既虧、内熱弥甚、煎熬津液、凝結爲痰、壅塞気道、不得通利、熱極生風、亦致猝然僵俌類中風証。」
『先醒斎医学広筆記』1613・婦人
「王善長婦人産後腿疼、不能行立、久之飲食不進、困憊之極。
仲淳診之曰、此脾陰不足之候。
脾主四肢、陰不足故病下体。
向所飲薬雖多、皆苦燥之剤、不能益陰。
用石斛、木瓜、牛膝、白芍薬、酸棗仁爲主、生地黄、甘枸杞、白茯苓、黄柏爲臣、甘草、車前爲使。」
迥jiongギョウ・コウ、はるかにことなる
李中梓
『医宗必読』(1647)
巻之一・腎以先天本脾以後天本論
「嬰児初生先両腎。未有此身、先有両腎、故腎爲臓腑之本、十二経之根、呼吸之本、三焦之源、而人資之以爲始者也。故曰先天之本在腎。・・・
蓋嬰児既生、一日不再食則飢、七日不食、則腸胃涸絶而死。・・・一有此身、必資穀気。穀入于胃、酒陳于六腑而気至、和調于五臓而血生、而人資之以爲生者也。故曰後天之本在脾。」
巻之一・陰陽水火論
「火性炎上、故宜使之下、水性就下、故宜使之上。
水上火下、名之曰交。
交則爲既済、不交爲未済。交者生之象、不交者死之象也。・・・人身之水火、即陰陽也、即気血也。无陽則陰无以生、无陰則陽无以化。
然物不生于陰生于陽・・・。
故気血倶要、而補気在補血之先、陰陽併需、而養陽在滋陰之上。」
巻之一・乙癸同源論
「古称乙癸同源、腎肝同治、其説爲何。
蓋火分君相、君火者、居乎上而主静、相火者、処乎下而主動。
君火惟一心主是也。
相火有二、乃腎与肝。
腎応北方壬癸、于卦爲坎、于象爲龍、龍潜海底、龍起而火随之。
間応東方甲乙、于卦爲震、于象爲雷、雷蔵澤中、雷起而火随之。
澤也、海也、莫非水也、莫非下也。
故曰乙癸同源。」
孫一奎(1522—1619?)
『赤水玄珠』(刊年不明)
①胆鬱 ②帰脾湯 ③命門図説(腎間動気説)
『赤水玄珠』鬱証門・巻十一
六元正紀大論の五鬱については「五臓本気自鬱」、戴氏の鬱論については「六鬱」と、鬱を二つに分けて論じている。上記鬱論の末尾に興味深い点が二加えられている。
(1)胆鬱
「五臓本気自鬱」の末尾に、五臓のそれぞれの鬱に加えて腑である胆の「胆鬱」を加えている。
「又有胆鬱者、口苦身○潮熱往来、惕惕然如人将捕之。治宣柴胡・竹茹・乾姜」
(2)帰脾湯
「六鬱」の末尾に、素虚之人として帰脾湯の適応をあげている。
「又有素虚之人、一旦亊不如意、頭目眩暈・精神短少・筋痿・気急、有似虚証、先当開鬱順気、其病自愈。宣交感丹、不効用帰脾湯。」
武之望
『済陰綱目』1620
巻一調経門・論心脾爲経血主統
「東垣先生所謂脾爲生化之源、心統緒経之血、誠哉是言也。
心脾平和、則経候如常。・・・・心脾虚損、心火妄動、則月経不調矣。
大抵血生于脾土、故云脾統血。」
張景岳
『景岳全書』 (1640)
「肝と鬱」や「肝と感情のかかわり」(七情による肝鬱気滞)が意識され始めいている。
『景岳全書』(1640) 巻十九・鬱証
(1)冒頭で六元正紀大論の五鬱を取り上げ「木鬱達之」に注目して滑寿・王履の「達」についての解釈を紹介し、次いで内経における情志と病に関係する諸編を列挙している。
更に内経における「五鬱之治」について独自の説を展開しているが、五臓について均等に説明を加えているので、ここではいまだ肝に大きな比重はないようだ。
(2)「論情志三鬱証治」において,「凡五気之鬱則諸病皆有此因病而鬱也。至若情志之鬱則総由乎因鬱而病也。」と述べた後に、怒鬱・思鬱・憂鬱という三証について、彼独自の病機・治法論を詳説している。
このうち思鬱・憂鬱では、心・脾・胃・肺などの藏がそれぞれ様々に関わっている。
巻十九・鬱証・論情志三鬱証治
《怒鬱と治療》
「怒鬱者、方其大怒気逆之時、則実邪在肝、多見気満腹脹所当平也。
及其怒後、而逆気已去、惟中気受傷矣。
既無脹満疼痛等証、而或爲倦怠、或爲少食、此以木剋土損在脾矣。
若怒後逆気既散、肝脾受傷而致倦怠小食者、宜五味異効散・・・。」
「怒鬱之治、若暴怒傷肝逆気未解、而爲脹満或疼痛者、解肝煎、神香散、或六鬱湯、或越鞠丸。
若怒気傷肝、因動而火、以致煩熱、脇痛脹満、或動血者、宜化肝煎。
若怒鬱不解、或生痰者、温胆湯。・・・」
《思鬱と治療》
「思鬱者、則惟曠女釐婦、及燈窓困厄、積疑在怨者、皆有之。」
「思鬱之治、若初有鬱結多滞逆不開者、宜和意煎加減主之、或二陳湯・・・。
凡婦人思鬱不解、致傷衝任之源・・・。
若思憶不遂、以致遺精帶濁、病在心脾、宜秘元煎。
若思慮過度、以致遺精滑泄、及経脈錯乱、病在肝腎不固・・・。
若思鬱動火、以致陰虚肺熱、煩渇咳嗽・・・。
若生儒蹇厄、思結枯腸、及任労任怨、心脾受傷、以致怔忡健忘、倦怠少食、・・・。」
曠むなしい、あきらか。曠女夫を亡くした女。釐おさめる、さいわい、あらためる
《憂鬱と治療》
「憂鬱病者、則全属大虚、本無邪実、此多以衣食之累、利害之牽、及悲憂驚恐而致鬱者、総皆受鬱之類。」
「憂鬱内傷之治、若初鬱不開、未至内傷、而胸膈痞悶者、宜二陳湯、平胃散、或・・・・。
若憂鬱傷脾、而呑酸・・・。
若憂鬱傷脾肺、而困倦怔忡・・・。
若憂思傷心脾、以致気血日消、飲食日減・・・。」