症例・腎気上攻(背熱痛)1 |
・現病歴
・初診時の症状
・既往歴・生活歴
・四診情報
・問診標の○印項目
《症例》・・・腎気上攻(背痛と灼熱感)
2009/9/10作成
患者
女性七十五歳
主婦・レザークラフトの講師(週に二回)
身長152cm、体重49kg
初診・2006年10月24日
主訴
(1)背痛(ひどい時は上肢も痛む)
(2)灼熱感(背中全体から右耳にかけて)
(3)心悸(不安感と肩こりを伴う)
副訴
腰痛・・・既往歴参照
現病歴
2006年5月ごろから、
週に一~二回ほど背中がビリビリ痛む(背痛)ようになる。
同じころから、心悸がしばしば起こるようになる。
心悸は、胸のドキドキと共にいつも①急な肩こりとを伴って起こる。
②不安感
午前中に多いが昼も起こる。
6月になると、背中の痛み(ビリビリ)の起きる頻度が増した。
7月にかけて、背中全体が焼けるような熱い感じ(灼熱感)が加わった。
灼熱感は週に二~三回起こる。
心悸(不安・肩こり)が起きてるときには、余計に背中が焼ける。
内科で検査したが消化器には問題なし。
整形外科に通うが、背痛・灼熱感ともに頻度が増す。
8月には神経内科へ通う。
デパスを処方され、心悸が起こったときに飲むと少し楽な気がする。
背痛・灼熱感はともに不変。
9月某ペインクリニックに通う。ホットパックやレーザー治療を始めて、最初の一週間は背痛が軽くなったが、その後はもとに戻った。
10月同ペインクリニックで、ツムラ(1)当帰芍薬散エキス・(2)桂枝加竜骨牡蠣湯エキス処方される。
諸症状は不変。
10/24当院初診
《10月24初診時の症状》
(1)背痛
背中全体がビリビリ痛む。
触っても、他覚適に特別熱いわけではない。
発赤もない
午前9:00ころから痛み始める。
軽い日は一日中軽いが毎日痛む。
ひどい日は左右の上肢も痛む。
朝起きてから午前9:00ころまでは痛まない。
入浴時は痛まない。
ホットパックをしている間は楽だ。
(2)灼熱感
部位は、背中全体から右耳にかけて。
耳の中まで熱い感じ。
焼ける感じは、何かをしていると忘れることもある。
じっとしているとカッカしてくる感じ。
日によって焼けない日もある。
現在は週に四~五日は焼ける。
朝の9:00ころから焼ける感じが始まり一日中夜まで続く。
しかし、灼熱感で眠れないということは無い。
(3)心悸
不安感と肩こりを伴って、午前中に起こることが多い。
その際灼熱感も強くなる。
5月~6月には頻繁に起きていたが、最近は少なくなってきて週に二~三回。
そんな日はデパスを1/2T飲む。
①②③ともに季節・天候には影響を受けない。
既往歴・生活歴
三十代に急性腎炎。
四十代に甲状腺機能亢進症。これはすぐに治った。
四十代の後半、右足だけが焼けた(火照った)。
70歳ころ(五~六年前)から腰痛。
立ち座りのとき、が痛くなるが、強い痛みではない。
前屈は可能だが痛む。
部位は左右の志室周辺からL2~4にかけてと、両側臀部。
朝犬の散歩のほかに、昼も散歩するがそれで痛むということはない。
2006年9月C病院でMRI検査。
L4.5のヘルニアといわれた。
74歳のとき夫が亡くなった。ショックが多かった。
四診
(1)望眼神・不栄(やや疲労した感じ)
面色・左右の眼瞼下に薄黒いシミあり
舌・紅、白厚膩苔(満布)、舌裏怒張あり
(2)聞・・・特に問題なし
(3)問食一日三食。二回は米飯。果物をよく食べる。飲
(一日に三回)ここ一年は、喉が乾かなくても水分を取るように心がけている。(水200ccを朝と風呂上りに飲む。お茶三杯×三回。牛乳300cc。)痰が絡む。特に朝ドロドロした白い痰が出る。便便秘気味。尿
(若いときからセンナを一日おきに服用する。)切れが悪い。尿漏れあり。夜間尿はなし。睡眠20:00~5:00ぐっすり眠る。趣味・仕事
(かなり早寝早起き)レザークラフト。週二回教室で教える運動
(日曜・月曜二日続けて)家でも作業する。(久坐の技芸・・・参考文献五)毎朝5:00に起きて犬の散歩約30~40分、昼に散歩10分。合計8,000から10,000歩/日。よく歩いている。汗盗汗月に一~二回(胸から上・首・顏に寝汗)四肢昼間は足が冷えるが、夜寝ると足は火照る。七情
冬には足にシモヤケができる。
(さわると足は踵から下が冷えて、やや湿っている)昨年夫が亡くなったときは、ショックが大きかった。
今は症状のことが気になって、イライラしたり憂鬱になる。
いつも喉が詰まった感がする。
心悸があるときは不安感も出る。
(4)切脈緩で左右とも寸関浮。腹大腹・小腹ともに軟。圧痛なし。臍周囲にわずかに動気有。背部右の魄戸から膏盲にかけてこりと圧痛。触っても熱くはない。手足の要穴
左右脾兪・胃兪・三焦兪・腎兪にかけて陥凹している。
左右志室は陥凹していて押すと圧痛がある。左右労宮・内關・外関に熱。その他
右大衝陥凹。左右とも踵から甲・足趾まで冷えて湿っている。
図の赤色は灼熱感の部分・背中に発赤はない
問診標の○印項目(五蔵分類は便宜上のもの)
全身肩が凝る、だるい、足が冷える、冷え性、温かいものがすき、寝汗をかく
肝・・・・・イライラする、こむら返りが起きる、ため息をよくつく、
憂鬱になりやすい、喉が詰まる感じがする、
頬や口の周りがぴくぴくする(この半年)
心・・・・・動悸がする
脾・・・・・なし
肺・・・・・痰が出る(白色・朝起きたとき)
腎・・・・・腰が痛い、足腰が頼りない
つづく