伝統医学とGNH-⑥三、「刺絡のデモンストレーション」 |
一、鎌田陽司
(NPO法人開発と未来工房代表・ネパール在住)
「ヒマラヤ伝統医学と地域の再生について」(英語)
二、小川康
(ダラムサラ、メンツィーカン在学中)
「ブータンの伝統医学が未来に貢献できることについて」(チベット語)
三、「刺絡のデモンストレーション」(日本語→→英通訳)
(石原克己・Todd Allen Raikes・矢田 修・山崎道広)(1)なぜ刺絡か
(2)資料『Introduction to Shiraku・刺絡入門』について
(3)デモンストレーションと鍼具贈呈
(4)反響とその後
(5)ブータンで行われている瀉血療法
三、「刺絡のデモンストレーション」(日本語→→英通訳)
(石原克己・Todd Allen Raikes・矢田 修・山崎道広)
(1)なぜ刺絡か
高田さんからの当初の要請は、注射針での刺絡を教えてほしいと言うものでした。
予算が少ないなか、手に入りやすい道具だからです。
ブータンの医療は無料ですが、近代化に伴って疾病構造も変化してきており、有限な生薬資源の節約に、チベット医学にもなじみのある方法で貢献したいと言う考えでした。
(2)資料『Introduction to Shiraku・刺絡入門』について・・・・付録参照
瀉血は古くから世界の伝統医学で用いられた技術です。
しかし現在日本で行われている「刺絡」は、より洗練されたものとなっており他の伝統医学や中国で行われているいわゆる「瀉血」とは一線を画すものとなっています。
そういったことを理解していただくために、事前に英文と和文を併記した資料を作り、ブータン側の皆さんに配って目を通してもらっていました。
(3)デモンストレーションと鍼具贈呈
学生や伝統医からモデルを募って四人が分担して、刺絡と、毫鍼、大針、火鍼などを約一時間半あまりかけてデモンストレーションしました。
最後に日本から持っていった刺絡の道具や針、文献資料などを寄贈しました。
寄贈者は東京九鍼会、日本刺絡学会ほか数人の個人です。
機材に関しては、鍼灸室と療法室で分け合い使用しているそうです。
(4)反響とその後
後の高田さんの報告によると、皆が新しい治療法に興味を示してくれたようです。
しかし年配のドゥンツォ(伝統医)のなかには「チベット医学の治療法とは考え方が違い異る治療法だ」(メンカンたより06,11)と言う印象を持たれた方もあったそうです。
ある意味でそういう反応は、瀉血と刺絡の違いを理解してもらうという所期の目的の一つを果たせた、という証でもあります。
高田さんは2007年から日本の大学院で学ぶため一時ブータンを離れていますが、現在のところ後続の鍼灸師養成に目処がたっていないそうです。
しかし患者からの要望も強いため、高田さんが2年間指導してきたアシスタントが伝統医の監視のもとで継続するそうです。
刺絡に関しては、膝、肩、腰、それから風邪の患者に対する井穴刺絡を、行っているそうです。
(写真は、アシスタントが実際に刺絡治療を患者に行っている場面)
(5)ブータンで行われている瀉血療法
最後に、ブータンで行われている、チベット医学による瀉血について、少し説明します。
ブータンの瀉血療法
①小さなナイフのような器具
②傷口の大きさが違う(血がダラーッと噴出)
③良い血と悪い血を分離するため1週間前に必ず特定の
薬が処方され、瀉血時には悪い血が排除され易くなる。