背熱痛・乾咳・臀部痛・不眠・・・多彩な症状-6/6 考察 |
(一)全体の経過について
(二)個々の症状について
【考察】
(一)全体の経過について
初診時2010年3/27舌紅、津少、苔少、
口中乾燥、口渇
午後から夜間にかけて症状が憎悪。
疲労で症状が憎悪。
背の熱感
干咳
等、陰虚(津液精血不足)による虚熱と燥がある。
八診5/15一週間一度の鍼治療では、病勢に追い付いていないという感触だった。
とにかく忙しそうだった。
2010年11/20再診①この頃も、舌・紅、苔少乾燥、津少
と、所見は初診時とあまり大差はない。
しかし干咳は1/10程度、背熱はなく、口中の乾燥は半減しており少しずつ改善してきている。
「八月以降仕事の忙しさが軽減した」とのことだった。
これが回復に味方したようだ。
十一月ころは、
仕事の負担が減ってしばらく経つので虚労の度合い減り、
漢方エキス治療と病がつりあって、一進一退しているような印象だった。
しかしまだ火種は残っている。
(二)個々の症状について
①背熱痛腎気上攻の陰虚タイプである。
張璐『張氏医通』1695巻五諸痛・脊痛脊強などに陰虚タイプの「脊」熱痛が載っている。
『医通』の場合は脊痛だが、考え方は背痛にも応用できる。
②干咳三十代後半に一時セキがひどい時期があり、今回は初診の二年前2008から寛解と憎悪を繰り返していた。
週一回毎週土曜の鍼灸治療をしていた頃は、週末になるとセキが増えていた。
十一月の段階でもまだ1/10程度は出ている。
火種は残っていて、虚熱が増えたり、肝鬱熱が増えたりすればいつでもまた悪化の可能性はある。
③胃痛教科書に載る胃痛のタイプは、①寒凝、②食積、③気滞、④火鬱、⑤瘀血、⑥陽虚、⑦陰虚などである。
今回の場合は過労で悪化するもので、激しくはない隠痛のようだった。
(初診時はすでに軽減しており、他の愁訴が強かったのであまり詳しく聞いていない。)
肝・腎・肺の陰(精血津液)が皆不足しており、典型的な胃陰虚の症状はないが、胃の津液も不足していたと思われる。
④臀部痛初めは脾胃の問題による関連痛かと考えたが、
八月になって胃痛がなくなっても相変わらず臀部の痛みは残っていた。
血不栄によるものかもしれない。
左に残ったのは「脊柱が左に側弯し、起立筋は左が緊張している」ためだろう。
⑤入眠難虚熱が擾心して寝付けない考えた。
一応心腎不交と考えたが、典型的ではない。
とくに夢を見るともいっていなかった。
セキがおさまれば寝れるかなと思ったが、そうでもなかった。
後にエキスで治療しているときに、ストレスで寝れないようだとドクターが言っていた。
仕事自体を苦としたり、人間関係でもめたりということは無さそうで、まじめな人なので肝鬱というより思慮過度による、心血不足や心火かもしれない。
⑥仰臥で膝を伸ばして寝れない経過でも書いたが、「脊柱が左に側弯し、起立筋は左が緊張している」臀部も左に緊張が強かった。
左の背中の緊張は、血不足が嵩じると強くなり、
回復すると緩む。
緩むと仰臥で眠れる・・・ということだと思う。
左下肢のしびれも同じような事だろう。