改定『通俗傷寒論』と『診病奇侅』の比較-1 |
参考・『通俗傷寒論』と『診病奇侅』の比較-2
昨年秋にアップしたものだが、読みにくいので少し手を加えてみた
【メモ】
腹診をするとき按ずる手の力加減を、寸口の脈のように、軽手・中按・重按」するという記載が、清代の『通俗傷寒論』に載っている。
『通俗傷寒論』の腹診についての記載は、中国の医書にしては、めずらしくし詳細なものである。
その記述の中には、日本の腹診書と類似した文章が散見される。
手元にある日本の腹診書で良く参考にするのは『診病奇侅』である。
この中にも、軽・中・重の三段階の力(あるいは深さ)で診断するという、
竹田陽山の記事がある。
比較すると以下のようになる。
わずかに違っているが、そっくりな部分もある。
『通俗傷寒論』
軽手循撫(なでる)
「自胸上而臍下、知皮膚之潤燥」(所見)
「弁寒熱」(診断項目)
中按尋捫(ふれる)
「問痛不痛」(所見)
「察邪気之有无」(診断項目)
重按推按(おす)
「硬否や苦痛」(所見)
「弁臓腑之虚実、沈積之何如」(診断項目)
『診病奇侅』(竹田陽山〇南冥引古伝) (医道の日本p4)
軽手循撫
「鳩尾より臍下に至て」「皮膚の潤燥を試」(所見)
「部位の相応を可定」(診断項目)
中手尋捫
「疼不疼を問」(所見)
「病邪の有無、腸下及諸空所の強弱、
或は動気の有無を可診」 (診断項目とは所見)
重手推按
「更に疼不疼を問」(所見)
「臓腑の虚実、及沈積動気の浅深を診す」(診断項目)
どちらかがオリジナルなのか、あるいは双方が参考とする別のオリジナルがあるのか興味がある。
【比較資料】
(一)兪根初『通俗傷寒論』1776(中医古籍出版2002)
第五章傷寒診法・第四節・按胸腹に胸から腹にかけての診察法が載っている。
その構成は次のようになっている。一、胸腹の区分と名称p149この診法総論の部分に、軽按・中按・重按で何を診るかという記述がある。
二、診法総論p149
三、診法と診断p150-152
第五章傷寒診法・第四節・按胸腹《診法の総論部分》P149
「故胸腹爲五臓六腑之宮城、陰陽気血之発源。
若欲知其臓腑如何、則莫如按胸腹、名腹診。
①軽手循撫、自胸上而臍下、知皮膚之潤燥、可以弁寒熱。
②中按尋捫、問其痛不痛、以察邪気之有无。
③重按推按、察其硬否、更問其苦痛、以弁臓腑之虚実、沈積之何如。
惟左乳下虚里脉、臍間衝任脉、其中虚実、最爲生死悠関。」
(二)『診病奇侅』
そしてよく似た文が『診病奇侅』(医道の日本p4)にあった。
(竹田陽山〇南冥引古伝)というものである。
参考・亀井南冥(1734--1814)
竹田陽山は、松井子静の漢訳本によって追加された一人。
石原保秀の解説によると、漢訳本は明治十一年(1877)と二十二年 (1,888)に清国で刊行された。
「下手の法、手の重さ、大抵『難經』の菽法に可準。
①軽手にて鳩尾より臍下に至て循撫し、皮膚の潤燥を試、部位の相応を可定。
②中手にて尋捫し、疼不疼を問ひ、病邪の有無、腸下及諸空所の強弱、或は動気の有無を可診。
③重手にて推按し、更に疼不疼を問ひ、臓腑の虚実、及沈積動気の浅深を診すべし。(竹田陽山〇南冥引古伝)」