歴史を知ろう-4 19世紀イギリスと、21世紀アメリカは相似形・・・『近代ヨーロッパの情熱と苦悩』 |
『近代ヨーロッパの情熱と苦悩』 中公文庫
すでに二〇〇年前に、
イギリスでは、人口の数%のひとが
土地や富の源泉を所有する世界が、存在していた。
二〇〇年かけて世界中にその構造が広がった・・・
2011年
「ウォール街を占拠せよ(Occupy WallStreet)。」と叫び声を上げた運動が、アメリカ全土に広まった。
p430-431
第四章 ヴィクトリア時代イギリスの光と影
「この地主階級は貴族とジェントリーというふたつの範疇からなっている。
貴族は公・候・伯・子・男の爵位保有者、
ジェントリーは爵位を持っていない地主の総称で、
・・・それら以外の位階のないジェントリーは、エスクワイアの尊称で呼ばれた。
貴族もジェントリーもともに大土地所有者という点では変わりがなかったが、
貴族は概して一万エーカー以上の、
ジェントリーは一〇〇〇エーカーから数千ないし一万エーカー規模の土地所有者であった。
一エーカーは〇.四〇五ヘクタール、約一二〇〇坪なので、
一〇〇〇エーカーは一二〇万坪、
一万エーカーは一二〇〇万坪ということになる。
彼らの所有地が途方もなく大きかったことがわかるであろう。
その所有地の中には、森や川、村落、
時にバラと呼ばれた都市選挙区がまるごと含まれてしまうこともしばしばであった。
パトリック・カフーンという商人兼パンフレット作家が1803年に計算したところによると、
貴族の家族数は王族を含めて五七八、
ジェントリーのそれは四万六八六一、
人口は前者が二九〇〇、
後者が二三万四〇〇〇ほどで、
両方合わせても全人口の1.5パーセントにも満たなかった。
彼らはまさしく有閑階級で、地代を主な収入源に、年数千ないし一万ポンドも超える莫大な不労所得があり、
(当時の労働者の年収はせいぜい六〇~七〇ポンド)
だから職業労働とは全く無縁の存在であった。」