歴史を知ろう‐5 松原 久子『驕れる白人と闘うための日本近代史』 |
『驕れる白人と闘うための日本近代史』 文春文庫2008
松原 久子(ドイツ語原文著), 田中 敏 (訳)
この本を読んだのはすでに、四年前だ。
もとの単行本は2005刊。
明・鄭和の大航海についての、カリフォルニア大学でのディスカッションにおける、
アメリカの歴史学の教授に対する
p144
「私は、このような論証は、ヨーロッパの海洋国家で、他民族を幸せにしたいという願いの下に海外遠征を行った国など一つもなかったという史実を隠ぺいしようとするものであると、反論した。」といった、胸のすくような話とか・・・。
p149
「中世初期に、北部のヴァイキングがロシアの川筋に沿って黒海まで南下してきたとき、奴隷は極北の国で取れる毛皮に次いで主要な商品だった。
彼らはアルメニアの黒海沿岸で、胡椒とシナモン、絹織物、ビロード、真珠、宝石、そして北欧では常に渇望されていた砂糖などを買い、奴隷を売り込んだ。
「奴隷(スレイブ)」は、語源的に「スラブ人」と同じである。
大がかりな奴隷狩りが行われた。
ポーランドからボルガ河に沿ってウラル山脈に至るロシアの平原で、ヨーロッパの奴隷狩りの専門家たちによって、スラブ人の男女が捉えられたのである。
1453年頃にコンスタンチノープルがオスマン・トルコによって征服されるまでは、特にジェノバの商人たちが奴隷貿易を行っていた。
ジェノバの船で運ばれる奴隷の大群はダーダネルス海峡を通り、そこから、今日のレバノンへと流れ込んでいった。
この奴隷貿易をヨーロッパの歴史の本では、
上品に黒海貿易と記述している。」
これは、アフリカの黒人奴隷よりも前から、ヨーロッパが行っていた奴隷貿易の話。
そのほか、イギリス東インド会社の中国に対するアヘン貿易(密貿易)の裏事情などなど・・・
真実を知ると、唖然とする西欧の表と裏。
読むべしですな・・・。
出版社 / 著者からの内容紹介
近代史を見れば、白人が野蛮だったのは明らかだ!
欧米人の優越意識を覆すためにドイツで刊行され、あまりにもはっきりと「日本の優越」を展開したため、大きな物議をかもした書
内容(「BOOK」データベースより)
欧米においては、自分たちの歴史こそ世界史であり、自分たちの生き方にこそ文明の名にもっとも相応しく、地球上のあらゆる民族は欧米文明の恩恵に浴することによって後進性から救われたと教えられてきた。
だから彼らの潜在意識の奥深くには、確固たる優越感が入り込んでいる。
これに対し、著者は、江戸期の鎖国日本は経済的社会的にみごとなまでのバランスのとれた「小宇宙」社会を形成しており、人間と自然の共生に心を砕いていたと史実を示す。
それは同時代ヨーロッパの、すべてを侵略征服せんとする拡張謳歌精神とは正反対だと指摘する。
ヨーロッパの世界侵略は、その「小宇宙」を壊したのであり、それを「文明開化」と解釈するのは大間違いだと言う。
この、ヨーロッパのほうが野蛮だった、とういう主張は、ドイツで大きな物議をかもしたが、同時に今や、世界人口の急増と資源の枯渇を前にして、欧米でも「小宇宙」日本の共生思想に目覚め始めている。
欧米人の優越意識を覆すためにドイツ語で刊行された書を、今度は日本人の劣等感を打ち破るために、邦訳出版する。
大航海時代の到来以後、全世界を発見、征服した「偉業」に対する欧米人たちの誇りを根底から覆す書。
松原 久子(まつばら ひさこ、1935年5月21日 - )・・ウィキペディアより
は、長くドイツで活動していた学者、評論家であり著作家である。ドイツ・ペンクラブ会員。京都府出身、アメリカ合衆国・カリフォルニア州在住。
人物
生家は京都市の建勲神社であり、同市で育つ[1]。
国際基督教大学を1958年に卒業し、アメリカ合衆国・ペンシルベニア州立大学(舞台芸術科)で修士号取得、日本演劇史を講義した。その後、ドイツ・ゲッティンゲン大学大学院にてヨーロッパ文化史を専攻、1970年に博士号(日欧比較文化史)を取得した。
ドイツでは週刊の全国紙「ディー・ツァイト」でコラムニストを務めたほか、西ドイツ国営テレビ(当時)の国際文化比較討論番組にレギュラー出演するなどしていた。
1987年アメリカ合衆国・カリフォルニア州 に移住し在住。スタンフォード大学フーバー研究所特別研究員を経て、著作活動を続けている。
版画家の松原直子は妹。
著作
「驕れる白人と闘うための日本近代史」 2005年、文藝春秋
「言挙げせよ日本 - 欧米追従は敗者への道」 2000年、プレジデント社
「和魂の時代 - 開き直った『杭』は打たれない!」 1987年、三笠書房
「日本の知恵 ヨーロッパの知恵」 1985年、三笠書房
「日本人とドイツ人 - ドイツ家庭教育に学ぶもの」 1974年、三笠書房
その他、主にドイツ語による評論、小説、戯曲など多数