鍼灸自学自習Ⅰ・四診総論-5 自然経過と養生 |
一、四診による診察の目的
二、診察は治療の一部
三、診察から治療へ
四、理論と経験
五、変化を読む
六、自然経過と養生(1) 比較の条件
(2) 原体験としての自然経過
(3) 時間的尺度
六、自然経過と養生
(1) 比較の条件
ある治療によって、1.どれだけよくなったか、・・・などの評価は、治療者の個性(患者との相性)、気候風土・社会状況(時間と空間)という背景のもとにおいて、次のような条件を考慮して行うべきである。
2.どれだけ病気の過程を短縮できたか、
3.どれだけ苦痛を軽減できたかこのような条件を考慮して経過を比較しないと、治療効果の評価は、不十分なものになると思う。
①「治療しない+養生しない」 治療(-) 養生(-)
②「治療しない+養生する」 治療(-) 養生(+)
③「治療する+養生しない」 治療(+) 養生(-)
④「治療する+養生する」 治療(+) 養生(+)
いまや普通の風邪(感冒)でも「薬を飲まずに、寝て、発汗して、自然治癒」という体験のある人は、まれになっている。
(②「治療しない+養生する」 治療(-) 養生(+)・・・にあたる)
(2) 原体験としての自然経過
「何も治療せずに経過を観察すること」は、非常に大事な体験である。
しかし現代日本では、よほど意識的でなければ体験できない。
最近では一般に、たとえ普通のカゼであっても、何か薬を飲まずにはいられない気分になるようだ。(CMによる製薬会社の教育啓発のたまものか・・・)
ほんの三、四十年前までは寝て治したものだが、
今は要らない薬(西洋薬)を飲んでこじらせる人が多い。
(ウイルスに無効な薬を出す医師が多数いることも理解不能だが)
したがって、もし自分が風邪でも引いときは、まず治療をしないで経過をみるという実験(体験)をすること。
そしてその場合も、①「治療せず+養生もしない」場合と、を比べる。
②「治療せず+養生する」
その体験をもとに、治療の効果を、養生の有無を考慮して比較する。
治療効果に、養生が大きく影響することが実感できる。
(3) 時間的尺度
(1) の冒頭に挙げた、治療を評価するための1から3の項目は、
どれだけの期間(時間的な視野)で評価するかによって、
意味合いが違ってくる。
目先の症状や苦痛を緩和しても、結果的に更なる問題・症状を引き起こす事のないように、「標・本」の見極めが大事になる。
感冒の発熱に、鎮痛解熱剤を使うことは、誤治・壊病につながる。