二つの火-17 太陽の徳 ① |
第四章 二つの火・・・項目番号は引用者による
一、着想の現場 151
二、昌益は誰を批判しているのか 155
三、太陽の火 158
四、日用の火 162
五、龍火・陰火・天火 164
六、本気と余気 168・・・(注・芳村恂益『二火弁妄』1715に触れている)
七、人火、石木の火 171
八、連続と不連続 174
九、太陽の徳 189
層のあいだの連続と不連続は、太陽の徳に関してもみられる
《昌益》万物は太陽の火によって「生生無窮」であると昌益はいう。
《張介賓》君火を太陽の光としていたが、《恂益》
万物をそだてるのは、太陽の熱としている
万物をそだてるのは太陽の熱とし,
君火を太陽の光になぞらえていた
太陽の火のなかに君火・相火を区別し、
光を恒常的なものとして君火、
熱を変化するものとして相火とした
太陽の熱が万物をそだてるという観念を、
君火・相火の説に組こんだ
九、太陽の徳・・・① 《》は引用者
層のあいだの連続と不連続は、昌益のいう「日徳」、
すなわち太陽の徳に関してもみられる。
《昌益》
「日徳」について昌益はのべていた。「日火とともに、徳を天下に同じくするならば、万物は太陽の火によって「生生無窮」であると昌益はいう。
日火光、定土に照り降りて、
万物生生無窮にして、みな人に与へて、
日輪わが有とすることなし」。
万物をそだてる太陽のはたらきは張介賓と芳村恂益に言及が見られる。
《張介賓》
張介賓はいう。「天地の和するはただこの日のみ、張介賓が、太陽の熱を強調していることに注意しよう。
万物の生ずるもまたただこの日のみ。
もしこの日なかりぜ、天地大なりといえども一寒質のみならん。
あに六合ことごとく氷壺にして、乾坤みな地獄にあらざらんや」
(『類経附翼』大宝論)。
君火を太陽の光としていた張介賓だが、
万物をそだてるのは太陽の熱としている。
太陽の光を君火とする張介賓の説は、
君火・相火の説に新たな一歩を踏み出した。
しかし太陽の熱が万物をそだてるという観念は、この新説とは無関係なものとしてあった。
《恂益》
芳村恂益はこれを関係づけようとする。
張介賓とおなじく、恂益においても万物をそだてるのは太陽の熱である。「太陽の余烈、熱をなし暑をなし、余烈は余も烈もあまりの意。
庶物の生長、よく栄えよく茂す」
(『二火弁妄』惑問序)。
恂益にとって、これが相火であることはすでにみた。
一方、恂益は、君火を太陽の光になぞらえていた。「太陽の天に懸るや高明至尊」、これは太陽の光が一年中おなじ明るさをもたらしてくれることに恂益は注目している。
「君の徳」と「実に相似となす」。相火はよく炎暑を夏に旺んにして、過ぐるときはすなはち衰ふ。
すなはち太陽の君火のごときは、
ひとり寒暑のためにその明を増減せず。
冬天厳寒といへども、
火鏡をもってこれを受くるときは、
すなはち火を得。
これあに余気は衰旺ありて、本気は衰旺なきにあらずや。
(『二火弁妄』惑問四)
光は一年を通じて変わらないが、熱は季節に応じて「衰旺」がある。
恂益にとって、太陽の光と熱のちがいは、
恒常性と変化の違いにほかならない。
恂益は太陽の火のなかに君火・相火を区別し、光を恒常的なものとして君火、とすることで、太陽の熱が万物をそだてるという観念を、君火・相火の説に組こんだのである。
熱を変化するものとして相火
つづく
二つの火-1・・・小林博行『食の思想―安藤昌益』
二つの火-2・・・昌益は誰の説を念頭に置いているのか
補足・二つの火-2・・・運気論の緒篇は十世紀初頭の創作らしい・
二つの火-3 太陽の火-①
二つの火-4 太陽の火-②
補足・二つの火-2
二つの火-5 日用の火
二つの火-6 龍火・陰火・天火①
二つの火-7 龍火・陰火・天火②
二つの火-8 龍火・陰火・天火③
二つの火-9 本気と余気 ①
二つの火-10 本気と余気 ②
二つの火-11 本気と余気 ③
二つの火-12 人火、石木の火 ①
訂正・・・二つの火-12 人火、石木の火 ①
二つの火-13 人火、石木の火 ②
二つの火-14 連続と不連続 ①
二つの火-15 連続と不連続 ②
二つの火-16 連続と不連続 ③
二つの火-17 太陽の徳 ①
二つの火-18 太陽の徳 ②