今朝から腕が挙がらない |
【患者・主訴】
コンビニのレジの仕事をしている三十代前半の女性。
いつもは、過労による脊痛・背痛・腰痛・側頭痛などで、大体週に一回治療に来ている。今日は仕事が忙かったせいか、こめかみが少し痛い。
加えて今回は、「今朝から腕が挙がらない」という。
万歳をすると右は80度くらいまでしか挙がらず、肩関節から肩井周囲~缺盆にかけて引きつり痛い。
【四診】
脉・緩
舌・淡紅薄白苔
腹・季肋左右と心下に緊張あり。
頭部・顖会から前頂にかけてがやや硬い。
背部・左右の肩甲骨内縁に圧痛あり。これらはいつもと変わりない。
膈兪から胃兪にかけて、左右とも緊張と圧痛。
頸部・後頸部左右とも緊張して、圧痛あり。手足・
右側頸部と、右前頸部に緊張と圧痛あり。右曲池圧痛と硬結。
右条口から豊隆にかけて硬結と強い圧痛。
前頸部と右曲池・右条口から豊隆にかけての緊張と圧痛とは珍しい。
【治療と経過】
①肝兪、脾兪、大腸兪・・・ステン一寸二番で接触し理気
右三陰交・・・ステン一寸二番を刺入し、疏通のち養血
この段階でとりあえず右腕も左と同様に挙上可能となる。
しかしまだ、右の肩井付近、と乳突筋から缺盆にかけてがツッパリ痛む。
②前頂付近の固い部位を、銀古代鍼を寝かせ、呼気にわせて百会から前頂方向に圧迫しながら擦る。
肩井付近のツッパリが取れる。
(ここまではいつもの治療パタン)
③右合谷を銀古代鍼で擦る。
右豊隆付近の圧痛にステン一寸二番で接触し理気。
更に右の不容の周囲を銀古代鍼で擦る。
それぞれ毎回前頸部の緊張が緩み、最終的には消失。
乳突筋から缺盆にかけてがツッパリと痛みも取れた。
【謎解き】
もともとこの方は、夜更かしをしていて精血不足気味であった。
ここ数か月は早く寝るようになって大分改善してきていたが、数週間前から職場の人手不足によって、仕事量が増えていた。
最近は時間に追われて仕事しているので、肝鬱気滞と血虚が再びきつくなってきていた。
(まぶたが痙攣したりしていた。)
そんな中、クリスマス前後にチキンのから揚げをたくさん揚げる仕事が続いて多忙だった。
毎日レジの仕事をしながら、から揚げをあげては、取ハサミを使って右手で挟んで、右手を酷使していた。
よく聞くと、同じころに食事会もあってケーキや何やかやとイロイロ食べ過ぎたとのこと。
首の後ろや、側頸部のコリ、コメカミの痛みはいつも、多忙や寝不足で起きる。
とくに珍しくはない。
前頸部のコリ痛みは珍しい。
今回はおそらく、①飮食不摂で陽明経に停滞が生じた上に、が重なって、右腕の陽明経に阻滯が生じて、挙上不能となったのだろう。
②右手の多用と、
③仕事多忙による血不足(血不栄)
いつもと同じ治療で、後頸部と側頸部~肩井にかけてのコリと痛みは取れた。
陽明側のコリと痛みは、最後に、手足の陽明経とに疏通してとれた。
不容周囲