古い五臓配当の図・・・小池盛夫「二つの五藏配当について」 |
小池盛夫「二つの五藏配当について」の、「第八章 父子の序と古文系配当の関係」に関する図を作ってみた。図上でクリックすると拡大する
抜粋・・・小池盛夫「二つの五藏配当について」-3-七章・八章・九章
第六章にある『春秋繁露』の「父子の序」というのが、十字の五行の事である。
抜粋・・・小池盛夫「二つの五藏配当について」-2-五章・六章
五行自体の配列が先に決まっていて、それに対する五臓の割り付けかたのパターンが、古文系と今文系という二つある。
そして古文系は、犠牲の四足動物を上から眺めて、実際の解剖学的臓物の位置に基づいて、十字の五行を各臓物に配当した。
抜粋・小池盛夫「二つの五藏配当について」(『内経』146号2002)
[]や()などによる注釈を一部省略。句読点や「」を加え、改行した。参考および引用文献は諸略。太字と下線は引用者による。
第一章 序論
第二章 今文尚書、古文尚書
第三章 今文、古文系配当の混乱
第四章 十二紀(月令)の五藏配当
第五章 医書は今文系配当を採用
第六章 臓器から藏氣へ・・・・・・・・・・『春秋繁露』父子の序
第七章 肝も脾も脇腹に位置する
第八章 父子の序と古文系配当の関係
第九章 終論
第八章 父子の序と古文系配当の関係
もし、『春秋繁露』の父子の序を・・・略・・・古文系配当に当てはめたらどうなるであろうか。
すなわち『春秋繁露』の「木居左、金居右、火居前、水居後、土居中央、此其父子之序」を『五經異義』の「古尚書説、脾木也、肺火也、心土也、肝金也、腎水也」に当てはめるのである。
すると“脾木は左、肺火は前、心土は中央、肝金は右、腎水は後”となる。
これは『五經異義疏證』の中で、後漢の鄭玄が述べているように、古文系配当は、五藏の身体内での位置(現解剖学的) を示すものである。
『靈樞』本蔵で肝と脾が脇腹に位置していると指摘したが、これを見ると肝は右、脾は左に位置し、現解剖学の肝臓と脾臓に同じであることがわかる。
更には、肺の前、心の中央、腎の後は、胸部の肺臓、肺臓に囲まれた心臓、背部にある腎臓という解剖位置に相当する。
加えて、医書に見られる五藏の並び方及び横隔膜の上下の区分する内容は、五藏の形態に関して、
その生理とは別に、現解剖学上の五藏を意識していたことが理解されるのである。
五藏の並び方及び横隔膜の上下に区分する内容とは次のようなものである。
「陽中之少陰肺也」
「陽中之太陽心也」
「陰中之少陽肝也」
「陰中之至陰脾也」
「陰中之太陰腎也」・・・『靈樞』九針十二原第一
「背爲陽、陽中之陽心也;
背爲陽、陽中之陰肺也;
腹爲陰、陰中之陰腎也;
腹爲陰、陰中之陽肝也;
腹爲陰、陰中之至陰脾也。」・・・『素問』金匱真言論篇第四
ここでいう陽中は横隔膜より上方、陰中は下方を意味し、肺と心は横隔膜より上に在り、肝と脾と腎は下にある。
また、ここに記す少陰とか太陰は経脈の陰陽ではなく、季節や方位の陰陽である。
例えば、少陽は春であり木の方位に当たり、肝に配される。
・・・略・・・
父子の序を古文系配当に当てはめてわかったことは、古文系配当というのは、現解剖学の五藏の体内での位置を示すもので、医書の中には、五藏を現解剖学の五藏として理解し述べているものがあることが解り、これは、今文系配当だけでは理解できない内容が存在していることを示している。
このことから次の様なことが導き出されるだろう。
すなわち、古文系の五藏配当は臓器そのものであり、
今文系のそれは、その応用によって具体的な臓器の概念から離れ、
より抽象的な概念(藏氣)への移行を推進させたということだろう。
左右の問題-1 内経・難経・診病奇侅
抜粋・・・小池盛夫「二つの五藏配当について」-1-一章~四章