思いつく範囲での「基本原理」 |
(一)気の一元論
(二)生命力
(三)部分と全体(1) 大宇宙(天地)と、小宇宙(小天地)の相似(四)重層構造の人間
(2) 身体の中の部分と全体・・・部分に全体が反映している
(五)先天+後天=現在
(六)動的な平衡
(一)、気の一元論
集まっては散る気の運動と、陰陽・五行論による認識
世界はすべて気でできている。(広義の気)
気が集まったり分散することで、
形あるものができたり、変化したり、壊れたりする。
密度の濃い重い気は、形を持っていて、見たり触れたりできる。
密度の薄い軽い精妙な気は、形を持たないが、
その一部は音や風・熱気や冷気などのように感じることができる。
命もまた、気の集まっては散る運動とともに、生まれて・成長し・死んでゆく。
人の心も体もすべて、気(広義)でてきている。
生物を含め世界は、常に運動している。
このような気の運動には、規則性がある。
気(広義)の運動の仕方は、
具体的な「時間」と「空間」を条件として設定したうえで、
陰陽・三才や五行などの概念を用いて、くわしく細分化して表現される。
もともと一つのものを分けるのであり、
その逆(個物を集めて全体を組み立てる)ではないので、
細分化した思考は、常に「一」(全体・運動変化する統一体)に立ち戻る。
(二)、生命力
(1) 生長し維持する力環境の中の人間を、
生きた状態で、全人的に(感情・生命力・身体を)見る。
元気、正気の存亡が健康維持と、治療のカギである。
先天の力は腎に在り、後天の力は脾胃と肺にある。(後出)
(2) 排除する、守る力正気によって、外来の邪気(六淫)は「排除」される。
(3) 内部環境を整える力(相互に転換する=気の相の変化)内生の邪(気滞・内熱・痰湿・瘀血など)は、正気の働きにより一分は「排出」される。
また、邪の一部は本来の運動性を取り戻すことで、正気に「転換」する。
(三)、部分と全体
(1) 大宇宙(天地)と、小宇宙(小天地)の相似大宇宙(天地)の気の運動を、陰陽論と五行論で表す。
小宇宙(小天地)の気の運動もまた、陰陽論と五行論で表す。【気と、陰陽・三才・五行】
外なる自然と、人間の内なる自然は、相似である。
自然も人も、常に変化している(気の升降収散)。
人は、環境・年齢・季節・月・日の中でつねに変化している。
変化の仕方には法則がある。
図‐1
おおきく見れば、すべてはひとつの気(広義の気)である。
その運動を表現するときに、いくつかに分割して詳しく見ていく。
二分割・・・陰陽(陰気と陽気)
三分割・・・天人地の三才(位置関係は上中下、時間は初中終)
四分割・・・四象(少陰・老陽・少陽・老陰、陰陽を二分割、2×2=4)
五分割・・・五行(四象+中央、4+1=5)
六分割・・・三陰三陽(陰陽をそれぞれ三分割、2×3=6)
一(一気・太極)→二(天地・陰陽)→三(天地人・三才)→四 (四季、四方)
一(元気・正気)→二(形気・陰陽)→三(精気神・三焦)→四 (四肢)
天の四つの働き(木・火・金・水)+土台としての地(土・中央)=五行
体の四つの働き(肝・心・肺・腎)+肉体としての脾(土・中央)=五臓
図‐2図‐3
【五臓と十字の五行】・・・四方・四季+中央
現代の蔵象(臓腑弁証)において、五臓の機能的位置関係を論じる場合は、
1.四方と中央、
2.上中下の三焦を組み合わせた「十字の五行」
によっている。
注・「星型の五行」は、抽象的な相対関係しか表現できないので、具体的な位置関係のモデルには用いない。
(1)四方と中央・・・気の升降(機能)の観点から見たもの①左東肝(升)と右西肺(降)という、東西左右の升降相反する位置関係。
②肝肺の東西軸は、心腎の上下南北の軸と直交する。
(2) 上中下(三焦)①心は上焦、脾胃は中焦、腎は下焦という上中下の基本関係があり機能と位置は合致。
②肺は上焦、肝は下焦で、肝の場合は機能と位置は一致せず。
注・肝の部位は中焦にあるが、明・清以降は、機能として下焦に分類される。
(3) 中央(脾・土)の特殊性南北上下に心・腎を配し、
左右東西に肝・肺を配する十字型の五行の中心(中宮)には、脾胃の土があり、
ほかの四行とは性格が異なるので別格である。
注・肝と肺の位置には①左肝右肺②下焦の肝と上焦の肺という二通りの考え方があるが、解剖とはかかわりのない機能論による考え方である。肝肺の左右については諸説がある。
(2) 身体の中の部分と全体・・・部分に全体が反映している診断と治療に用いられる。【例】脉、舌、耳、腹、頭、前腕と下腿
参考・フラクタルとホログラフィ
フラクタルとは、図形の一部を拡大すると自己相似性の図形が出現する図形のこと
(四)、重層構造の人間
ふたつの「分け方」「階層化の方法」がある。
①人間を存在様式に応じて、層構造(四層)で見る。(古代に共通する見方)
②生きた状態の人間を、気の深浅・粗密に応じて五層に分ける。(中国独自の見方)
(1) 四層の人間・・・身体・生命力・感情知覚・思考肉体(物=狭義の気)、
生命力(生、植物の層)、
感情と知覚(動物の層)・
思考(人独自の層)という、少なくとも三層から四層にわたって人間を捉えている。
中国では荀子(先秦時代)や朱子(宋)にみられ、古代ギリシアのアリストテレスにもみられる。
ただし中国ではあらゆる存在レベルはひとつの気の異なった側面・相(phase)であるのに対し、アリストテレスの場合は素材とアニマは本質的に異なった存在である。
注・荀子のいう「水火」とは生命を持たない物質の事で、対応する「気」という表現は狭義のもの。
(2) 生きた身体に関しては、五層の「深さ・密度」を想定する
(五)、先天+後天=現在
(1) 人の持って生まれた資質(能力・体質・気質)個々にみな違っており、平等ではない。
(両親の精を受けて生まれる=先天の気)
(2) 生まれた後飮食と呼吸(後天の気)によって、気(精気・正気)を補充し維持して行く。
(3) もって生まれた資質生まれた後の生活(後天生活)によって、
養われもし、損なわれもする。
(4) 中国医学は、以上のような「個人」を扱う。
(5) 現代の「文明」国「先天の気」と「後天の気」の両方が損傷されている現代文明では、伝統医学としての中国医学や、中国由来の伝統医学の土台が崩壊しつつある。
先天(気質・体質)+ 後天(生後の生活) = 現在
【後天生活の主な内容】①時代・環境(自然・社会)
②飲食・呼吸
③仕事
④起居・生活習慣
⑤情緒・精神状態
【先天後天と、臓腑】・・・腎と脾胃と肺①先天の気は、腎中の精に蓄えられている。
②後天の気は、飲食(脾胃からの水・穀)と、によって補給される。
呼吸 (肺からの清気)
(六)、動的な平衡
常に動いて升降出入しながら、一定の状態を保つ