語源・スキエンティアscientia-サイエンスとは知識のこと-
フランシス・ベイコンの思想①・・・自然支配の技術としての科学(スキエンティア)で引用した古川康『科学の社会史』の中に「彼にとって、技術としての科学(スキエンティア)は自然と社会を変革する力となるのであった」
というフランシス・ベイコンに関する一節がある。
ラテン語のスキエンティアscientiaは、 sek-「切る」や
skei-「割く」「分ける」「切る」
という語から派生している。
英語になるとサイエンスscience となり、明治期に科学と訳されているが、もともとの意味は「知識」ということだろう。
物事を分けて、言葉によって区分して「知る」のである。
もともと生成変化し運動する一つのものを、言葉の作用により「断片化」「分断」「区分け」し、
「ばらばら」に「分別」したうえで
「知識」として「意識」し「自覚」して、
蓄える。
それが知ること、あるいは知識を持つということだろう。
そういう作用や営みに関することを、スキエンティアscientiaと呼ぶのではないかと思う。
サイエンスもまた「知識」の総称であるとすれば、別に「近代科学だけが“知識=科学”である」と言いつのる必然性はない。
世界を切り取る方法である言葉自体が、恣意的なもの(ソシュール)である。
言葉で切り取られる世界は、言葉の数だけあるともいえる。
中国医学の土台となっている「気の一元論」や
「陰陽論」
もまた、世界を切り取って知識を得る方法の一つであり、
しかも今でも十分に実用的である。
資料一、岡山徹『語源でたどる英単語まんだら』(小学館2007)P236-p240
sek- ・・・「切る」
(k=c)section・・・断片、一部分
sector・・・部門、地区、区域
dissect・・・ばらばらにする
intersect・・・交差する
(cがgに変化)segment・・・一区切り
skei-・・・sek→skei- 「割く」「分ける」「切る」
(sek→ske(i))ski スキー(木を割るか、そぐかしてつくる)
skid すべる、横滑り
(kがchに変化)
schism 分裂
schizo‐ 分裂
schizophrenic 分裂病の
「分ける」=「分離」→「比較・識別」→「知っている」
へと発展scire=知る*
*引用者注(sek→ske(i)→ski→sci)
science 科学(enceは名詞化の語尾)
nescience無学、無知
conscience 分別、自覚、良心
conscious 意識している
prescience 予知
資料二、知識と科学