本多久夫『形の生物学』・・・二つのモデル |
例示型モデル・・・われわれの使う理論も、これに似ている?
著者には『シートからの身体づくり―生物が採用した自己構築法 』(中公新書1991) という名著がある。これを読んでからのほうが本書は理解しやすいと思う。
絶版らしいが中古で手に入る。
「複雑系」や「非線形現象」についての基礎知識もあるともっと良い。
p118
“そもそも科学の理論モデルには二通りあると考えている。
一つは、現実の現象に定量的にも合致するモデルで、これにより未来のことを予測し、事後どれくらい正しかったか費用化できるモデルである。
もう一つのモデルは、不思議な現象があるのだが、その機構が皆目分からないときのものである。
超自然的な誰がやったに違いないと考えてしまうような不思議な現象に対してである。
このようなとき、モデルに期待するのは「例示」である。モデルの細部や具体的なことが現実と正確に一致しているかどうかは、この際重要ではない。
今問題にしている現象もこの程度の機構で行われているのだろうと類推できるモデルがあるかどうかである。
不思議な現象を説明するために、今の手持ちの原理で何とかなりそうなのか、それとも別の新たな原理を持ち込まなくてはならないのかの見当づけのためのモデルである。
チューリングモデルは生物学にとってこの第二の範疇のモデル、即ち「例示」型モデルとして有効なのだ。”
【複雑系科学・数学史などの参考】
テオドール・シュベンク『カオスの自然学』工作舎1986
ジェイムズ・グリック『カオス-新しい科学をつくる』新潮文庫1991
池田・津田・松野『カオス‐複雑系の科学と現代思想』青土社1997
蔵本由紀『非線形科学』集英社新書2007/9
蔵本由紀『同期する世界-非線形科学』集英社新書2014/5
二ール・ジョンソン『複雑で単純な世界―不確実なできごとを複雑系で予測する』(インターシフト2011/12)
山口昌也『カオスとフラクタル』(ちくま学芸文庫2010/12)
吉田洋一・赤摂也『数学序説』ちくま学芸文庫2013/9
ドナル・オシア『ポアンカレ予想』新潮文庫2014/10