食の歴史と問題点・・・伝統医学から見て |
2008/04
Ⅰ 調理・保存 (3万年前~現生人類)・・・言語、火、道具(石器・土器など)の使用
調理技術(生・火熱・発酵など)
食料の保存法(乾燥・塩蔵など)
牧畜・栽培・耕作(麦・米・芋・トウモロコシなど)
(1)三万年~一万五千年前・・・狩猟・採集→→→移動
(2)BC7000~5000・・・・・・備蓄・保存技術→→→定住
Ⅱ 農耕・牧畜・交易(BC3500~AD14世紀)
(中央アメリカ、オセアニアは詳細不明につき省略)
都市文明の時代・・・自然を改変し人工世界を作り出すが、人口の大半は農村在住。
伝統医学が生まれ広く行われた。気候風土に沿った生活や伝統食。
(1)BC3500~1500・・・都市文明・・・文字・財の備蓄・階層分化・金属器・商業
①シュメル・BC3500頃~
②エジプト・BC3000頃~
③インダス・BC2500頃~
④黄河・・・BC2000~1500頃~
(2)BC800~300・・・思想と宗教の形成(ヘブライ・ギリシア・インド・中国など)
(3)BC3世紀~AD14世紀
世界帝国(ユーラシア大陸での広域国家)による、東西交流と産品の移動
(西) (中央) (東)
BC3~AD4世紀 ローマ シルクロード 漢
7~10世紀 東ローマ イスラム帝国 唐
11~12世紀 西欧封建諸国(十字軍) トルコ・吐蕃(チベット) 金・宋
13~14世紀 ・・・・・・・元・・・・・・・・・
Ⅲ 単一栽培と商品作物 (15~17世紀大航海時代)・・・世界規模での食材の移動
(1)生態系の変化(動植物の移動)を伴う、食材の移動と商品化
新大陸から・・・・・・トウモロコシ・ジャガイモ・トマト・ピーナッツなど
(2)プランテーション(単一栽培、奴隷制・・・伝統文化と生態系の破壊)
・・・コーヒー、紅茶、ココア、砂糖など
(3)世界経済の成立・・・・・新旧大陸、アフリカ、オセアニアを結ぶ経済
(4)各地の伝統食はまだ残っている。
Ⅳ 保存・流通の技術革新 (18~19世紀以後の産業革命・資本主義)
・・・世界規模での分業、工業国と農業国の格差拡大、交通手段の発達により、世界中の食材が工業国に流通する。
植民地は工業国(都市)の食料庫と化す。
保存と食品加工の新しい技術・・・・・伝統食の崩壊始まる。
(1)鉄道
(2)冷蔵庫(1859万博)
(3)保存技術(高温・低温殺菌・・ビン詰・缶詰)
Ⅴ 食の工業化 (20世紀)
人工世界の広がり・・・画一化・自然からの解離・自然破壊すすむ
(1)工業化・都市化
・・・伝統文化・伝統食の崩壊。現代病や生活習慣病を生む。
(2)世界規模での食料資源の不均衡
・・・都市人口増加と飽食・一方での食糧難
(3)食糧生産の近代化・工業化による、地力・環境の劣化、あるいは未知の危険性
・・・化学肥料・農薬・抗生物質・遺伝子操作・単一栽培・畜産・養殖
(4)食品加工と流通形態の変化
・・・加工食品の多様化・冷凍保存と流通革命。(冷蔵庫の普及)
(5)食の画一化と、アメリカの食品産業・食習慣 の影響
・・・ファストフード・油脂過多・ジャンクフード・電子レンジなど
現代日本・・・伝統医学の時代(Ⅱ~Ⅲ)に比べて、以下の様な点が特徴的。
(1)冷凍技術(コールドチェーン)
・・・旬の喪失・工業製品としての食物
(2)毒物や有害化学物質
・・・添加物、防腐剤、農薬、ホルモン、抗生剤など
(3)電子レンジ・インスタント・外食化
・・・風土性、季節性、調理技術の喪失(料理をしない)
(4)ファストフード
・・・アメリカ型外食産業の害(肉・油脂・砂糖など)
(5)ジャンクフード
・・・嗜好品(有害な)であり、心身を養う食物ではない。
(6)食料自給率の著しい低下と、近代農法による生産方法の弊害
(7)生活習慣全般の崩壊に伴う、食習慣の無秩序化
まとめ
Ⅰ段階、人間は、ほぼ全面的に自然に依存し、食生活も自然に左右されていた。
Ⅱ段階、自然に手を加えて食料を生産し始めるが、気候変動などに翻弄される。
Ⅲ段階、世界中の気候風土を利用して食料を生産し、自然環境を大きく改変する。
Ⅳ~Ⅴ段階、
現在は都市(工業国)の人口を、機械化された商品作物農業(第Ⅲ世界)と食品産業(食品工業)が支えている。
しかし地球規模での食資料生産余力が無くなりつつある。先進工業国で自己家畜化したヒトの食物(餌のように工業的に生産される)は、遠からず供給不能になる可能性が大きい。商品作物を作り輸出する農業国においてもしかりで、自国の食料が供給できなくな恐れが大きい。
日本では江戸期の鎖国によってほぼⅡの段階にあったが、明治以後の約百年で一気に西欧の数百年分の、 食生活を含むあらゆる生活の変化が起きた。
中国ではさらに短期間に変化している。
伝統医学は、数千年にわたるⅡの段階における「自然との付き合い方」や「食習慣」を前提としており、そこから外れることを戒めている。
この立場から現状を見れば最低限、Ⅲ~Ⅳの段階にはまだ残っていた、気候風土となじみのある「生活習慣や伝統的食生活」を取り戻すべきだ、と考える。(日本で言えば高度成長期以前の生活習慣や食生活)
参考文献
宮崎正勝『知っておきたい「食」の世界史』角川ソフィア文庫2007
伊藤俊太郎『文明の誕生』講談社学術文庫1988
養老猛司・森岡正博『対論・腦と生命』ちくま学芸文庫2003