臓腑病機の歴史 七、脾胃と腎 |
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訂正2011/8/12
末尾の参考図《脾胃の津液・血・脾陽・脾陰》と《腎陽》《腎肝と精・血》の関係
中の《王綸》不能摂血は、薛己の注を本文と間違えた誤記なので削除。
注意はしているがやはりミスがある。見つけた方には連絡をいただけるとありがたい。
七、脾胃と腎
脾津液・脾血・脾陰・統血・摂血・胃陰など・・・・・そして脾と腎
(一)銭乙は、脾胃と津液を重視
「小兒は虚し易く実し易い」と認識し、脾と腎を重視した。
また誤治などによる脾胃の津液不足と、それによる発熱や生風に注意を促した。
「小児易爲虚実、脾虚不受寒温、服寒則生冷、服温則生熱、当識此勿誤。」
宋版上巻・虚実腹張
「脾胃虚弱亡津液」
「下之既過、胃中津液耗損」
「医妄下之、其虚益甚、津液燥損」
「冷薬下之太過、致脾胃津液少」・・・いずれも諸疳
(二)孫兆(十一世紀)
・・・・補脾によって補腎する
「補腎不若補脾。脾胃気旺、則能飲食、飲食既進、能主營衞、營衞既旺、滋養骨髓、保精益血。」
(厳世芸『宋代医家学術思想研究』上海中医学院1993より)
(三)許叔微・・・補腎(陰)と腎陽(腎気怯真元衰劣・真火上蒸脾胃)
・・・・補腎によって補脾する
巻二・肺腎経病
「脾悪湿、腎悪燥、如硫黄附子鐘乳煉丹之類、皆剛剤、用之以助陽補接真気則可、若云補腎、則正腎所悪者。故仲景八味圓、本謂腎気圓、以地黄為主、又如腎瀝湯之類、皆正補腎経也。」
巻二・心小腸脾胃病・二神丸
「有人全不進食、服補脾薬皆不験。予授此方、服之欣然能食、此病不可全作脾虚。蓋因腎気怯、真元衰劣、自是不能消化飲食、譬如鼎釜之中、置米穀、下无火力、雖終日米不熟、其何能化?」
巻六・諸嗽虚汗消渇
「腎気圓・若腰腎気盛、是為真火、上蒸脾胃、変化飲食、分流水穀、従二陰出、清氣入骨髓、合栄衛行血脉、栄養一身。」
(四)厳用和は、脾腎并治しつつ、腎に重きを置く。
・・・・・補腎→→→補脾
孫兆の「補腎不若補脾」(脾を補って腎を強める)とは逆に、腎陽を補うことで脾陽も高めて結果として脾を補う「補脾不如補腎」という方法。
五臓門・脾胃虚実論治(補真丸)
「人之有生、不善摂養、房労過度、真陽衰虚、坎火(*)不温、不能上蒸脾土、
衝和失布、中焦不運、・・・是致飲食不進、胸膈痞塞・・・此皆真火衰虚、不能蒸温脾土而然。古人云、補腎不如補脾。余謂、補脾不如補腎。腎気若壮、丹田火経上蒸脾土、脾土温和、中焦自治、膈開能食矣。」
(五)金以後・・・気虚発熱・中気下陥(『脾胃論』) など
(六)元以後
先天後天論(李中梓)、
気不能摂血(王綸、趙献可、繆希雍)、
脾陰虚(王綸、繆希雍、呉澄、)、
胃陰虚(葉天士) など
参考
図・・・・・・・・《脾胃の津液・血・脾陽・脾陰》と、《腎陽》 《腎肝と精・血》の関係
《脾胃の津液・血・脾陽・脾陰(津液・血)》 《腎陽》 《腎肝と精・血》
玉機真蔵論
「五蔵者皆稟気於胃。胃者五蔵之本也。」
金匱第七肺痿「重亡津液」 金匱・載氏八味丸
《銭乙》「脾胃虚弱亡津液」 《銭乙》六味丸(補腎陰)
「冷薬下之太過致脾胃津液少」 腎に実なし瀉なし
《孫兆》 (十一世紀)「補腎不若補脾」
脾胃を強めて後天之精から腎を補充する
《許叔微》補腎は滋潤を旨とする
《許叔微》
真元腎陽を強めて補脾する
「因 腎気怯、真元衰劣、・・・
譬如鼎釜之中、置米穀、下无火力」
《厳用和》
腎陽を補うことで脾陽も高めて脾を補う
「補脾不如補腎」
「真陽衰虚、坎火不温、不能上蒸脾土」
《張元素》
《李東垣》『脾胃論』 《朱丹渓》『格致余論』
気虚発熱・中気下陥 肝腎陰虚火動
《王綸》
《繆希雍》脾不能統血・脾陰虚
《趙献可》気能攝血 《李中梓》先天後天の論・肝腎同源論
《趙献可》《孫一奎》《張景岳》命門論・元陽元陰
《武之望》『済陰綱目』脾統血
《呉澄》『不居集』1739理脾陰之法
《葉天士》胃陰虚(沙參・麦門冬・偏豆・玉竹等、甘涼養胃)