腎気上攻の文献研究Ⅲ-2 |
《要旨》
一、腎気上攻(攻背)
二、 腎虚・邪在腎・督脈と気逆
三、『資生経』の背痛
四、上背部痛の病機表現(一)《腎気不循故道》・・・(腎気・逆・上)の肩背痛五、病機分類の深化・・・・寒熱と邪の種類
(二)《腎気逆上》
(三)《腎気不通・腎気不上達》
(四)《腎気逆攻》
注一、上逆のルート(従背・従腹など)
四、上背部痛の病機表現
許叔微の後になると、腎虚にかかわる背痛・項痛・項強・頭痛・(時には足痛)などの病機は、さまざまな文献で取り上げられている。
これらはいずれも腎虚にもとづく「上逆」「気逆」あるいは「背部の気の升降失調」に関係している。
その病機の表現名称には、
腎気逆上などのバラエティがある。
腎気不通(不上達)
腎気逆攻
(上攻という表現についてはⅠの注二参照)
(一)《腎気不循故道》・・・(腎気・逆・上)の肩背痛
載原礼『秘伝・証治要訣』(1443)巻之五・緒痛門・肩背痛
「経云、有腎気不循故道、気逆挟脊而上、致肩背作痛、宜和気飮、毎服加炒茴香半銭、炒水椒十粒。」
(二)《腎気逆上》
王肯堂『雑病証治準縄』(1602)・第四冊・肩背痛
「邪在腎、則肩背頚項痛、取湧泉、崑崙、視血者尽取之。
是腎気逆上而痛也。」
(三)《腎気不通・腎気不上達》
傅(ふ)青主『男科』 (1690)腰腿肩臂手足疼痛門・腰痛兼頭痛
「上下相殊也、如何治之乎?治腰乎?治頭乎?誰知是腎気不通乎。
・・・・蓋此頭痛、是腎気不上達之故、用補腎之味、
則腎気旺而上通脳。故腰不痛、而頭亦不痛矣。」
(四)《腎気逆攻》
腎気逆攻で足も痛むという。
林珮琴『類証治裁』1851巻六・肩背手臂痛
「(経)又曰、邪在腎、則肩背痛、是腎気上逆也。
蓋肩背為太陽経所循、又為肺蔵分域、凡太陽経及肺兪爲病、固足致痛、而腎気逆攻、亦足致痛焉。」