伝統医学とGNH-④一、鎌田陽司 |
一、鎌田陽司
(NPO法人開発と未来工房代表・ネパール在住)
「ヒマラヤ伝統医学と地域の再生について」(英語)(1)地域と地球の持続可能性
(2)伝統医学の復興の試み
(注1)《文化・環境と一体の伝統医》
表1文化・環境と一体の伝統医学
二、小川康
(ダラムサラ、メンツィーカン在学中)
「ブータンの伝統医学が未来に貢献できることについて」(チベット語)
三、「刺絡のデモンストレーション」(日本語→→英通訳)
(石原克己・Todd Allen Raikes・矢田 修・山崎道広)
7 サブセッション
見学の後はサブセッションです。
私たちが参加したのは、伝統医学の医師と学生に対して行われた公演会です。
二班に分かれてのサブセッション(交流会・分科会のようなもの)
A生薬班・工場見学や生薬についての意見交換
B病院班・ブータンの伝統医と学生へ向けての公演①鎌田陽司(ネパール在住)
②小川康
(インド・ダラムサラのメンツィーカン在学中)
③石原・Todd・矢田・山崎
(刺絡のデモンストレーション)
鎌田さんは英語で、小川さんは流暢なチベット語の公演でした。
抄録や文字資料は無かったので理解できた部分はわずかでしたが、
帰国後に調べた資料などを基に、印象に残っていることをいくつかお話しましょう。
一、鎌田陽司
(NPO法人開発と未来工房代表・ネパール在住)
「ヒマラヤ伝統医学と地域の再生について」(英語)
グローバリゼーションの進む現在の世界経済の趨勢は、持続不可能なのだという話から始まります。
(「文化・環境と一体の伝統医学」については (注1)
後半にはネパールでの具体的な活動の紹介があり、伝統が失われかけていたヒマラヤ伝統医学(チベット医学)の再興の試みについても説明がありました。
(1)地域と地球の持続可能性
現在の世界経済の趨勢は「持続不可能」だ。
多国籍企業による世界経済のコントロール
①単一栽培(農業)
②巨大企業による支配(経済)
から抜け出し「持続可能なシステム」へ・・・・
その方法は、地域と一体化した食と農にある
①ローカル経済へのシフト
②伝統文化を守る
(2)伝統医学の復興の試み
チベット医学は、ヒマラヤの最奥地の人々の命を救うほとんど唯一にして最善の医療だ。
だがネパールでは
二十世紀に、伝統が失われかけた。
1998年、NGO・ヒマラヤ伝統医師協会(HAA)を設立
「文化・環境と一体」の伝統医学 (注1)
を復興する試みが始った
*医学として
*伝統文化(社会と価値のシステム)の一部
*自然資源の保全と持続可能な活用の方法
(注1) 《文化・環境と一体の伝統医》
帰国後このことの意味を考えてみた。
伝統医学とは、近代以前から存在する経典を持つ体系的医学のこと。
近代医学が生まれるのは十九世紀の半ば以降であり、
「近代」医学に対して区別する呼称として
「伝統」医学と呼ばれるようになったと考えられる。
近代医学が現れる以前には伝統医学という言い方はなかっただろう。
伝統医学に共通する要素には、
①体液病理、、などがある。ユーラシア大陸にあって良く知られているのは、インド系、中国系、ギリシア・アラブ系の三つ。
②生気論、
③五感による診断、
④生薬(動植物)と鉱物の使用、
⑤日常生活と環境の重視、
⑥経典(文字による記録)
その分枝として考えられるのは、
①中国医学系の韓医学・日本漢方など、であり、それぞれの文化や風土に応じて個性的な特徴を持つ。
②インド医学系のチベット医学・モンゴル医学など、
③ギリシャ・アラブ医学系のヨーロッパの伝統医学・ウイグル医学など
社会学・人類学の観点に限って伝統医学の共通点をみれば、
①『自然』そのものに依存し、といったことがある。 (表1参照)
②文化(生活習慣)に規定され、
③多様性を持つ、
まとめると伝統医学は、文化・環境と一体だといえる。
現代医学が高い均一性を持つのは、そのよって立つ環境と依存する資源が、
近代以降に世界中に広まった都市化・産業化した
均一性の高い《人口環境》と《人工物》だからと考えられる。
表1文化・環境と一体の伝統医学
1『自然』そのものに依存・・・・診断から治療にいたるまで
(1)診断・・・医者の五感(自然からの所与) 基本気に近代的な産物を使わない2 文化(生活習慣)に規定される
(2)治療手段
①生薬(植物・動物・鉱物)
近代医学に比べ加工度合いは低い
②徒手
③土地や環境そのもの(温泉・砂・海水・塩水・泥)
(3)対象・・・自然治癒力
(1)「治癒力(含・体質)」は「生活」によって変わる3 多様性を持つ
(2)生活は「文化」に規定される
(3)「伝統文化」は、自然と調和した生活の智慧を持っている
文化・気候・風土(自然環境)は多様で、自然と文化に依存する伝統医学もまた多様になる