症例アトピー⑥注-1 |
注1衝気上逆
2陰気と陰気不足
3腹部の動気
1衝気上逆
衝気上逆は気逆の病機の一種で、急迫性が強く短時間のうちに動気等を伴いながら上逆(体の起きる前面もしくは背面から)するのが特徴である。
奔豚、肝気上逆、胃気上逆、腎気上攻、など他の気逆・上気・上逆との鑑別が必要。
又、厥や瘧・疝気・小腸気など、他の気逆の病気ともかかわりがある。
ベースに腎虚があり、奇経とのかかわりにおいては、腎気上逆との関わりが深い。
衝気上逆については、李東垣が脾胃と関連させて衝脉の気逆をはじめて詳しく論じた。
その後、葉天士が奇経に注目して『指南医案』で多数医案を残し、近代では張錫純が『医学衷中参西録』で詳しく論じている。
最近では、李克紹「衝脉粗談」『中医百年百名中医臨床家叢書・李克紹』(中医藥出版2001)が参考になる。
参考
腎気上攻の文献研究Ⅴ
腎気上攻の文献研究Ⅲ-5
2陰気と陰気不足
この場合「陰気」とは、広い意味での収蔵・収斂の気のことで、下焦の陽気を収蔵し漏れないようにする働き。
夜間の睡眠と、冬の安寧な生活によって養われる。
陰気不足の初期は、津液や精まで損傷されていない。
主に下焦の陽気を摂納する働きが不足する。
一般的な腎気虚や、二便の約束失調、精の摂納失司、呼吸の不納気などとは別の症状が出る。
たとえばが数日寝不足続くと陰気は損傷されて、上焦の虚熱による症状が生じるが(顏や掌のほてりやむくみ、背部の凝り、項強、頭痛など)、当然津液や精の損傷にはまだ至らない。
そこで今のところ、「陰液の不足はわずかで(二便・精液などの開闔・封蔵の異常にもまだ至らず)、陽気の相対的過剰(虚熱)が主な段階」
を、「陰気不足」と表現することにしている。
この虚熱が様々な症状を生む。
陰気不足では、腹部の動気は大きく強くなる。
手の脈は、全体にやや浮大の傾向になり、特に右の寸が浮大となる。
陰気不足が長引いて、虚熱が津液を煎熬すれば陰液不足にいたる。
そして更には気陰両虚にいたる。
(ここでの陰液不足は一般に言う陰虚のこと。五蔵のどの藏に及ぶかは、素体による)。
日ごろよく見かけられる背痛は、素体の陰血不足に内傷(夜更かし・過労など)を兼ねたものである。
参考
陰気不足