脊・背・肋皆痛(頭皮針の応用)6 考察① |
脊・背・肋皆痛(頭皮針の応用)5 経過③のつづき
【考察】
(一)症状の変化について
この症例主訴「脊・背・肋皆痛」は、
当初夜間のTh8棘突起上の痛みから始まった。
日が経つと牽引痛と圧迫感が、
次第に背部・脇胸から季肋にまで広がって、
ついには昼も痛むようになった。
症状が悪化して背・肋に症状が広がっていくときは、まず右から始まり左右同じ状態になった。
ついで左にも広がって、
時間帯も、当初の夜間のみからになっていった。
一日中となり、
夜間に重く、昼間は軽い状態
回復していくときは、
背・肋左右に牽引痛と圧迫感がある状態(昼夜ともに)から、
右だけ夜だけとなり、やがて消えていった。
このTh8棘突起上の痛みは、もともと数年前から一年に数回、
夜間にのみ一~二日起こり、すぐ消失していた。
ということは、素体の問題を考えてみる必要がある・・・・。
(二)素体
《外傷類》①高校生の時にクモ膜下出血で頭部を手術している。
前頂と顖会の真ん中あたりを、ちょうど督脉を横切るように手術痕が数センチ残っている。
頭蓋骨を切っているので手術痕には凹凸の変形がある。
②2000年に尻もちをついて、尾骶を強く打撲している。
このときは頂枕帯の頭皮針で治療した。
①②いずれも督脉を損傷しており、督脉の阻帯の因子の一つと考える。
とくに頭部の手術痕のある位置は、額頂帯の上焦区に当たり、上背や脇胸の部位に相当する。
《気滞傾向》③便通・・・神経質なので休日雖に家族がいると便秘する。
平日は便通あり。
④1999から2001年、夫が単身赴任。このころ患者は、夜間の不安感や四肢厥冷等で不調。
⑤四診10/01で、年下の兄弟のことで心配事があると言っていた。
⑥最近の6~7年ほどは、トールペインティング*を習っていて、一日2時間ほど座りっぱなしで描く。
今年は年末の展示会に向けて、春から夏にかけて頑張って描いた。
毎日夕方30~40分散歩する。
③④⑤は、肝鬱気滞傾向を示する。
④四肢厥冷
⑥は毎日夕方30~40分散歩するとはいえ、坐業と細かな作業に集中することにより、全身の気滞(坐業)と血虚(細かい作業に集中)を促進する。
《陰虚陽亢と血虚》⑦初診の前日9/27夜から生理が始まる(9/30に終わる)
⑧2002年(42歳)
のぼせ、目の乾燥などで漢方治療を始める。
⑨腹の動気
⑩夜間に重い症状・・・これは気滞と瘀血にもかかわる。
《瘀血》⑪生理・1996年(35歳)ころからレバー状の塊がでるようになった。
⑫2000年に尾骶打撲で治療したころは、暗紫で瘀斑も少しあった。
⑬初診時9/28、舌暗紅
2000年に尾骶打撲を治療したころは、暗紫で瘀斑もあった。
今回は初診時には無かったが、五診10/3に再びわずかな瘀斑があらわれた。
七診10/8には初診時9/28と同程度に回復していた。
《素体まとめ》督脉を損傷した既往があり、瘀血と肝鬱傾向がある素体だった。
更年期に差し掛かって、陰血不足の傾向が進みつつあった。
さらに趣味のトールペイントに打ち込む時間が増えて、
気滞血瘀と血虚が進んだ。
兄弟のことなど日ごろ、
心配したり思慮することも重なっていた。(肝鬱と血虚)
したがって陰血不足と気滞が募ると、
夜間にかつて損傷した督脉に阻帯が生じる。
程度が軽い場合は、短時間で緩解する。
肝鬱は、八椎から十椎の高さの督脉や膀胱経そして、
脇胸め季肋部の気滞を生じやすい。
頭部の手術痕が、頭皮針の上焦区にあることも、
胸と背の症状を起こしやすくしているのかも知れない。
つづく
脊・背・肋皆痛(頭皮針の応用)1
脊・背・肋皆痛(頭皮針の応用)2 診断・治療
補足ふたつ -主訴と四診---脊・背・肋皆痛
<脊・背・肋皆痛(頭皮針の応用)3 経過①/a>
脊・背・肋皆痛(頭皮針の応用)4 経過②
脊・背・肋皆痛(頭皮針の応用)5 経過③
脊・背・肋皆痛(頭皮針の応用)6 考察①
脊・背・肋皆痛(頭皮針の応用)7 考察②
脊・背・肋皆痛(頭皮針の応用)8 病機図