鍼は使い方次第・・・「ピュッと片手で抜く」とどうなるのか |
ある患者さんは、遠くから来る人なので数か月に一回くらいしか来れない。
夜勤もある仕事をしながら二人の子育て中なので、常に虚労気味。
なかなか休みも取れない。
そこでその人の住まいの近くにある「鍼もするDrのいる医院」を紹介したことがあった。
久々に当院に来院されて、「この前あそこの医院に行ってきました。風邪の治りも早かったし、確かに楽になったけれど、後でドッとくたびれた・・・」
「それと、鍼を抜くときは、看護婦さんが片手でピュッ、ピュッと抜くんです。」とのこと。
あららら・・・
抜針の仕方ひとつで補瀉が決まるのは、伝統医学としての鍼灸をする者にとっては常識。
しかし、道具として鍼を使い西洋医学の解釈で行う「近代医学的」鍼灸においては、抜針の仕方にはほとんど気をくばらないようだ。
せいぜい出血させないように気をくばる程度か・・・。
おそらく、「ピュッと片手で抜く」治療をする所には、元気な人や邪実の人しか残らない。
虚した人は、次第に脱落するだろう。
昔、鍼灸学校卒業してすぐ半年ほど接骨院で働いたことがある。
保険の柔道整復の外に、鍼もするところで、
院長他、従業員合計4~5名全員鍼灸師の資格も持っている。
一人が、十数人の治療をするので、一日に合計80~100人+αの患者数だった。
ほとんどの主訴が経絡経筋病なので、痛む場所・圧痛点・阿是穴に
ブスブス20~30本ほど刺して置鍼し、時々通電もする。
まあそれなりに効いていたように思う。
ただ、抜針の時は、もちろん補写なんか考えていないので、
ここも、ピュッ、ピュッと片手で、どんどん抜いていく。
結果として、そこでの治療はおそらく「疏通」と「理気」としての働きが主で、
さらに最後の「ピュッ」という抜針によって、有余の気を放出させる「瀉法」に偏っていた。
患者層は、若い運動選手や、元気な人が多かった。
虚労の人や虚した人は少なかった。(おそらく脱落する割合が多いのだろう)
学校では、銀鍼での補寫を習っていたから、抜針の時に片手でピュッと抜くようなことは考えられなかった。
学生のときは、経絡治療の治療院で半年ほどアルバイトをしたことがあり
灸頭鍼や、お灸の手伝いをしていた。もちろん鍼は先生がする。
時々先生がバイトの学生に鍼を教えてくれる。
銀鍼で丁寧な手技だった。
面白いことに、こちらには虚した患者が多かった。
主訴も整形外科的な運動器疾患は割合として少なかった。
銀鍼での治療は、虚した人には相性がいいが、
手技が雑だと結果として「瀉法」に働くので後で「だるい・しんどい」・・・となる。
銀鍼でも「瀉法はできる」
ステンレスでも、太い鍼でも「補法」はできる。
鍼は、使い方次第だ。