経絡とは |
経絡(経絡系統)は、
①臓腑と四肢を「連絡」し、通路の系統である。
②上下内外を「交流」し、
③全身に気血を「運行・栄養」し、
④体内の各部を「調節」する、
現在まで、解剖学的に経脈の存在は、確認されていない。
経絡は「生きている身体にそなわる機能」であり、死ぬと機能は停止するものであろう。
経絡は、それ自体は見えないが、痕跡として身体に症状などを表す。
(風に揺れる木の枝によって知る見えない空気の動き、
あるいはウイルソンの「霧箱」によって知る放射線の航跡にも似る。)
機能としての経絡体系は、物質的器官としては特定できないが、あえてその走行経路に当たる組織を列挙すれば、筋や血管その他の循環器や神経などである。
そうすると経絡体系は、山田慶児が言うように
「いわゆる<脈>は、経絡だけでなく、筋や血管その他の循環器や神経なども包括する概念*であったにちがいない・・・」ということになるだろう。*p55の参考文献摘録を参照
こういった異なる系統の組織を横断する流路については、「脈管外通液路**」(木原卓三郎・京都大学)についての研究があり、一定の参考になる。
**加藤征治『リンパの科学』(講談社ブルーバックス2013)のp73-75,p92-63や、小高修司「人体、水・氣攷―堀地論文の検証もふくめて」等に、木原の「脈管外通液路」についての言及あり。
小高修司「人体、水・氣攷―堀地論文の検証もふくめて」『内経』155号(2004夏号)より
(以下は引用。太字は引用者・・・全文はp55の参考文献摘録を参照)
“・・・経絡とは元来こういった「筋や血管、神経などを包括」した複合的概念が、実際に存在する氣のながれとして認識されていたものを、その存在を感得できなくなった後世の人間が、単なる機能的存在と考えるようになったと云えるのではないだろうか。
以下のような事実を提示したい。
・・・略・・・この研究は1940年代に京都大学解剖学教室で行われ、「脈管外通液路」(組織間隙系と漿膜腔系)と呼ばれ、血管・神経を初めとする全身の(解剖学上の)組織中に多数存在する「結合織」を連なった流れを意味する。
つまり或る部位では神経の外膜、そして他では筋膜というように、結合織の繋がりとしてみれば連続した流れが可能となり、原始リンパ流のルートが完成する。
この脈管外通液路のリンパ流こそが、營氣と呼ばれる経脉中を流れる氣を意味している可能性が考えられる。”
経絡体系には、経脈の数と走行の両面で、歴史的に諸説が並存する。
鍼灸治療中に、患者が感じる経絡現象・経絡感伝現象*(鍼や灸をしたした部位から線状・帯状に伝わる感覚)は、古典や教科書に図示されたものと一致する場合もあり、一致しない場合もある。
図示されたものは「一般的なモデル(模式図)」であり、実際には個人により体調により様々なバリエージョンがある。(血管や神経の走行でも、個人により微妙に異なるのと同じ。)
*経絡説の歴史的変遷と、経絡現象については以下を参照。
石原克己「経絡説の変遷」(『伝統鍼灸』2014年第40巻2号、178-183)