変化の過程に対する評価 |
発症する一週間ほど前から、左の背部が痛かった。
発症してから、脇と胸とともに背部にも水疱ができてた。
発症後三日目に抗ウイルス剤を服用し始めた。
薬の効果があるかどうかは微妙な時期だと思う。
医者からはP.H.H(ヘルペス後神経痛)になったら、神経ブロックを紹介すると言われたそうで、P.H.Hを恐れているという。
鍼の治療を始めたのは四日目からだ。
患者には、
「ふつうは痛のピークは4~5日~一週間で、その後徐々に皮膚も奇麗になり、痛みが減って痒みが感じるようになったりしながら、治まるまでには二週から三週間かかる」・・・という旨を最初に話した。
発症後一週間から10日ほどで、全ての水疱はきれいになった。
胸と脇の痛みは10日~15日ほどで無くなった。
順当な治り方だと思う。
ただし、発症前から始まっていた左背部の痛みは、
発症後三週間経っても、やや軽減しつつもいまだ残っていて、かなり痛い。
夜寝るときに、痛み止めを飲む。
本人は、背中の痛みが残っていることが気になって、
胸と脇の痛みが無くなったことには頓着していない。
背中の痛みが三週間以上続いていることをしきりに訴える。
「全く良くなっていない。最初に背中が痛くなってからもう一ヶ月もたつのに・・・」と。
患者には、胸と脇に関しては順当にに治癒している・・・と良くなっている部分があることについて説明した。
それで少し安心したようだった。一人暮らしの人は、とかく心配性になる。
特に年輩の人は一日中症状のことを考えてしまうようだ。
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性格や、物の見方の違いによって、変化の過程に対する評価は大きく異なる。
そして、良くなっているところと、良くならないところを見分けることは本人にはむずかしい。
このケースについて書いたのは、治療効果(抗ウイルス剤や鍼の)がどうのこうのということではなく、
「良くなったことよりも、良くならないことが常に気にかかる」という患者心理や、
「患者がどのように自分の症状をとらえているか」ということの、一つの典型例、だと思うからである。