カール・ピアソン『科学概論-
世界大思想全集41』春秋社(昭和五年発行、原著初版1892、二版1988)
オーテピア図書館にありました。
とても古い本で、旧字体でポイントも小さくてなかなか読みにくい・・・。
ざっと検索したが、新しい訳本はないようだ。488ページもあって、精読は出来ないので今日一日で速読した。
19世紀末の最新科学の知見をもとに、当時の科学について方法論もふくめて網羅的に言及している。
エーテル仮説についての言及が多いのも、時代を感じさせる。
今では、統計学で有名な人だが様々な分野について博識だったようだ。
レーニンは、ピアソンを批判したらしい。
『エントロピー法則と経済過程』は、そのアプローチは異なるもののケインズ『確率論』と同じ問題を扱っており、両者の思想的立場は非常に近い。
ケインズは、1907 年にケンブリッジ大学のフェローシップを得るため確率に関する論文を書いたが、それはムーア倫理学から出発し形式論理学により確率・帰納法を論じたものであった。
しかし、その後、ピアソンとの論争が契機となって統計学に関する部分を拡充することを決意し(清水徹朗「統計思想としてのケインズ『確率論』」2007 年経済学史学会報告)、1921 年に『確率論』として出版した。
一方、そのピアソンに学んだジョージェスク-レーゲンは、『エントロピー法則と経済過程』において、
数学的・力学的方法は適用できない
ことを主張したが、
この主張は、
ラプラスに代表される数学的確率論を
無条件で人間社会に適用するのは誤りである
今回目に付いたところ。p161-p162
【しかし、概念の実在性、その思惟外部の存在は、
知覚的経験に訴えることによつてのみ論証されうるということを、
私たちは注意して常に心に止めておかねばならない。
幾何学者ですらその
点、線、面の現象的不可能性を主張している。
物理学者は決してその原子、分子を知覚可能なものと仮定していない。
科学は現在のところ、これらの概念がただ思惟の圏内にのみ存在し、
純粋に人間精神の産物であると見ることを持って満足している。】
理念型としてのモデルそのものは、現実には存在しないという考え方・・・。
幾何学における点や線や面は、現実世界には存在しない・・・がしかし数学は役に立つ。
原子や分子については、19世紀末の段階での論説だ(今の時代なら原子や分子も知覚できるが、それでも素粒子は知覚できていない)。
今では別に珍しくはない議論なのかもしれないけれど、
私は、ピアソン支持。。。
参考